週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

対話の重要性

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

しばらくサボっておりましたが、ようやく再開です。

 

前回も紹介した、膝関節症を抱える顧客の「ある日の訓練」。

(前回の記事も併せて読んでみてください)

toratezza0316.hatenablog.com

 

リハビリテーションにおける対話

・「今」の課題を導き出す

・目先の指標

・まとめ

 

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リハビリテーションにおける対話

 

 

そもそも対話とは、

特定のトピックスに関して、お互いの意見の違いを理解し合いその答えを探求していくこと

です。

決して自分の正しさを主張して相手を言い負かせることではありません。

 

患者から話を聴くことの重要性はセラピストなら誰もが知っています。

が、

特に経験の浅いセラピストにとって

話を聴く=基本情報の収集、又は雑談

のウェイトが高くなりがちです。

治療上の戦略をその場で決定したり舵を切り直したりするための「対話能力」を身に付けるには、それなりの経験が必要だと感じています。

 

そういう意味で、

これから紹介するやり取りが「対話の苦手なセラピスト」にとって臨床で役に立つきっかけになれば幸いです。

 

 

 

「今」の課題を導き出す

 

私:

今、一番気になることは何ですか?

 

顧客:

右脚に力が入らんから歩くとき不安定です。

 

私:

力が弱いから「倒れそうになる」ってことですか?

 

顧客:

いや、倒れそうなわけじゃなくて不安定。

 

私:

倒れそうな感じはしない…すごい頑張って支えている?

 

顧客:

前ほど頑張ってはないですよ。

 

私:

左脚の力が10としたら、右は大体いくらですか?

 

顧客:

「6」くらいです。前は1か2でした(笑)

 

私:

支えることはできているけど、徐々に右が疲れてくる訳ですね。

 

顧客:

そうなんです。ちょっとの間ならいいんですけど、だんだんこの辺(腿裏外側)が痺れてきて…

 

私:

ということは、力が弱いことそのものよりも、長続きしないことの方が問題ってことですね?

 

顧客:

そうです! でも、よくなってきたから調子に乗って…

 

私:

長く動けるためには、右も「10」になるように鍛えたらいいのかもしれませんが、もうちょっとスマートな方法を探してみましょう…少し前まで、膝がかなり力んでましたよね。

 

顧客:

そうですよね。今は全然気にならなくなりました。

 

私:

膝が痛くなることはない?

 

顧客:

ええ、少し前まではいつもピンと伸ばして力んでましたけど、かかとで踏ん張りが利くようになって、それもなくなりました。

 

私:

ということは、残った問題は脚の付け根のほうですね?

 

顧客:

ええ。

 

私:

股関節の周りの筋肉がいつも硬いんですが、今は特にどの辺が?

 

顧客:

今は後ろの方が…

 

私:

お尻の辺りですね?

 

顧客:

はい。

 

私:

今、背骨を前後に動かして腰を反ったりお辞儀したりできますか?

 

顧客:

やってみます…後ろへはよく伸びるようになりました…前は…あ、ちょっと待ってください…

 

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私:

一度反ってから倒そうとすると、動きを切り替えるのに時間がかかりますよね?

 

顧客:

はい…腰が上手く動かんですね。

 

私:

骨盤を起こすことは大事なんですが、起こしたり倒したり衝撃を逃がすように変化させることはもっと大事です。〇〇さんは、この「骨盤の変化」が苦手なんじゃないですか?

 

顧客:

その通りです…だから長く歩いてると疲れてくるんですか?

 

私:

はい、変化がないから衝撃を逃がせない。歩くたびに骨盤に衝撃が蓄積して、固めた筋肉で守ろうとするんでしょうね。

 

顧客:

あー…腿裏がいつもすごい硬くなるんですよ。骨盤の動きがないからそうなるってことですね?

 

私:

そういうことですね。ということで、今日の課題は「骨盤をスムーズに変化させるようになる」にしましょう。

 

→治療へ

 

 

目先の指標

 

・・・40分程度の治療時間のうち、15分くらいはこんなやり取りをしていることに気が付きました。

 

ただ、

この方向性を決めることで「目の前の指標」が非常に明確化されます。

 

今回の場合、

「骨盤を前後にスムーズに動かせるようになった」

という結果が、

右足の不安定さや脱力感、腿裏の強張り

といった問題を解消し、

作業耐久性の獲得(長時間動ける)

につながるのではないか?

と仮説を立て検証していきます。

 

実際の治療については今日は触れませんが、

治療を組み立てていく上で顧客との「対話」は非常に重要だと改めて感じるエピソードでした。

 

ちなみに、

この日の治療後は骨盤の動きがスムーズになり、

「右足の不安定感」も解消しました。

日常的な耐久性も改善傾向したが、その分オーバーワークになりやすいためにメンテナンスが常に必要。

 

 

 

まとめ

 

今回は「対話」という、治療の方向性を決める重要な作業について紹介してみました。

方向性が定まると、徒手的な技術も意図が明確になり結果を出しやすいですね。

 

リハビリテーションを提供する側には技術は不可欠ですが、方向性を導き出すことも技術の一つであることを若手のセラピストにはしっかり学んでほしいなと思います。

 

ところで、

いつもながら記事を一つ書くのに結構なエネルギーを要します。

今後、どのような形でお送りするか?

いろいろ考えているところではあります。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。