軽い足をつくる
今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。
寅丸塾の管理人です。
前回に引き続き、解剖に振った話です。
足が腫れる問題
私は学生の頃、何よりも優先して解剖学を勉強していましたが、
いざ仕事に就いてみるとその知識も中々活かすことができませんでした。
臨床では、疾患や障害名に関わらず、セラピストが対応出来る範疇で問題を鑑別し価値へと変換する「生きた知識」が必要です。
さて、
前回はコンパートメントという問題について言及してきましたが、
同じくらい高頻度に遭遇する問題が「足の腫れ」。
何なら、
病院で出会う患者の殆どが大なり小なり抱えている問題の一つではないかと感じるほどです。
割と有名な考え方ですが、
第二の心臓と言われるふくらはぎの筋肉がポンプの役目をしており
その筋肉が硬くなったり疲労することで、足の血流が戻らなくなり「腫れ」たり組織内の圧が高まって「張る」
といった現象が起ります。
つまり、
血の流れと筋肉の関係は非常に重要になってくるわけですが、入院患者は基本運動不足なのでこのような問題を抱えるのは当然と言えば当然かも知れません。
動脈と静脈
改めて解剖学的な構造を含めて復習していきます。
ざっと下肢の主要な循環系を整理してみました。
これだけでもまぁまぁ自己満足するくらい復習になったわけですが・・・
※ここから暫くはウンチク的な専門用語が続きます。面倒くさい方は飛ばしていただいて結構です。
心臓から送り出された動脈血は腹大動脈を経て、
外腸骨動脈→大腿動脈→膝窩動脈
と名前を変えながら、周囲に枝を出しながら膝まで到達すると、
・下腿の前面を前脛骨動脈→足背動脈
・下腿の後面を後脛骨動脈(+腓骨動脈)→足底動脈
となって、それぞれに対応する組織を栄養します。
一方、
心臓へ戻っていく静脈血は、
動脈と同じルートを辿って上行するもの(=深部静脈系)と、
皮膚の表面に近い、浅い所を通るもの(=表在静脈系)、
それら深部静脈系と表在静脈系を結ぶ「交通枝」
に分類され、末梢まで巡った血液を回収します。
ちなみに、
動脈は心臓が押し出す血液の圧力に耐えるために血管壁が平滑筋で厚く覆われており弾性がありますが、
静脈は心臓に送り返す血液の量に応じて太さが変化しやすいように、血管壁は薄く柔らかいつくりです。
また、下から上に血液を送る構造状、逆流を防ぐための「弁」が至る所に存在します。
したがって、元来静脈は血液が溜まりやすい構造なのですが、それを押し流すのが「足の筋肉」の役目です。
足の筋肉の疲労や弾性の低下によって、
・動脈に対しては強い圧をかけて流れを止める
・静脈に対して押し流す役割が果たせない
ことが、循環血流の問題を来たし、結果的に浮腫みという症状を引き起こす場合があります。
※内臓系の疾患による影響はここでは除外している。
※心臓へ戻る血液の内、深部静脈系は85%、表在静脈系が15%の割合で還流させている。表在静脈系には側副血行路の役目があるため、メインである深部静脈系が詰まった時に交通枝を介して表在静脈へ流入する。
我々セラピストは、
循環障害を来たしている患者に対して直接血管をどうにかできる立場にはありません。
ので、その周囲の組織の問題を取り除くことで、結果的に症状が緩和循環への影響を軽減することができれば、十分な価値を提供したと言えそうです。
臨床に落とし込む
話を戻します。
以前も記事にした、空手少女の「その後」。
以前よりも肩の疲労は減りましたが、
動きを観察していると足首が硬く踏ん張りがあまり利かないために構えや技を出す時に前傾姿勢になりやすいように見えます。
また、
下腿全体が張っていて「浮腫みやすい」、足を持ち上げる時の重さ、片脚立ちの不安定さ・・・
母親も、そこが気になっておりしばしば足をマッサージしているようです。
そこで、
後脛骨動脈を触知してみると、「脈がとりにくい」です。
後脛骨動脈は、下腿の後面の深層を通る動脈で足底まで伸びる重要な動脈です。
そのすぐ側を走る後脛骨筋は、下腿を輪切りにするとちょうど「真ん中」にあります。
周囲を骨・筋肉で囲まれているため、しばしば周囲の組織からの圧力に晒される筋肉です。
また、
足首付近では足の指を曲げる筋肉である「長趾屈筋」「長母趾屈筋」とも交差します。
上手く踏ん張れない人は足の指に力を入れやすい傾向にあるために、過活動になりやすく押さえると痛みが伴いやすい部位です。
細かい筋肉の説明は省きますが、
この症例においても「内くるぶしの3横指上」の下腿交差部位で後脛骨筋の強い痛みと、
後脛骨動脈の拍動の弱さが見てとれます。
つまり、
・脚全体の張り
・脚の重たさ
・足首の動きの悪さ
・片脚立ちのバランスの取りにくさ
という問題に対して、
後脛骨筋を中心とした深層筋群の内圧を軽減、
適切な滑走状態をつくることで後脛骨動脈へのストレスも開放されると、
貯留していた血流も循環しやすくなる
結果、パフォーマンスは改善する可能性があります。
徒手的に深層筋を操作して後脛骨動脈を触れると、
・最初よりも明らかに脈がとりやすい。
・脚が軽く感じる
・脚が細くなった
・足首を起こしやすくなる
・バランスは…多少アップ。
とまぁ、
複数ある問題の内の1つはこういった筋肉と血流の問題がリンクしている
ことを改めて感じました。
マッサージするポイントや、ストレッチの方法を伝えてセルフメンテナンスを習慣化するように持っていきましたが、パフォーマンスを低下させないという意味では一番重要な課題だと感じます。
まとめ
今日は前回の続きを話したくて下肢の血流について考察してきましたが、
あれこれと専門用語を使ってしまい、まとまりのない記事になってしまいました。
ですが、
・どこかが上手く使えてないとどこかにしわ寄せがくる
・筋肉の問題だけではなく、循環の悪さにもつながる
・それらを見極めて変えられる所から変えていく
という原則的な思考が、基礎的な知識に基づいて臨床推論として多くのクライアントに提供していけると臨床業務も楽しく感じられるのではないでしょうか?
今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。