腰に爆弾を抱えた看護師の話
今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。
寅丸塾の管理人です。
GW中に記事をたくさん書いておきたい
という気持ちはあったのですが、結局バタバタして最初と最後の2つだけになってしまいました。
というわけで今日は、以前もお話しした看護師さんの「その後」。
肩の問題を掘り下げる
前職場でお世話になったYさん(看護師)は現在も私の顧客ですが、
随分前から「肩が張って…」と自覚症状を訴えては私が慌てて応急処置をする
というのが割と日常でした。
「肩の症状」自体を緩和させることはそれほど難しくないのですが、
そもそも既往に「腰椎ヘルニア」を抱えているそうで、遠目に見ても身体の中心の動きがあまりよくありません。
ヘルニアについて語り出すと話が完全に脱線するのでまたの機会にしますが、
彼女の場合は
「左の腰(鳩尾の左下後方)の辺りに爆弾がある」
「左大腿部の外側に痺れが出やすい」
という自覚症状(?)があったようです。
この時点でも深い部分の筋肉が上手く使えていないことが推測されますが、
ここでは「横隔膜」と「大腰筋」にフォーカスしていきます。
図のように、
横隔膜は肋骨や腰椎を支点にドーム状に広がる筋肉
大腰筋は腰椎と大腿骨を繋ぐ強固な柱のような筋肉
ですが、
これらは腰椎の部分で互いに連結しています。
つまり、
横隔膜の動きは大腰筋のパフォーマンスに影響する
ということです。
平たく言うと、
どちらかがバカになると他方もそれに引っ張られるため、
それを補うために別の部分が代償します。
何度かお伝えしていますが、
人間は身体の一部が損傷すると不安定な状態となるため、安定を確保するためにどこかを固めます。
ヘルニアという問題を抱えた身体は、
「腰椎をできるだけ動かさず固めて動く」
という戦略を慢性化させ、
腰椎と強く連結している横隔膜の短縮を誘発させます。
また、
大腰筋も緊張した状態が持続するため、
体幹の下半分の機能をかなり制限した状態で日常生活を送っている状態です。
体幹の上半分に負担を強いた状態のために、しょっちゅう肩こりを生じるのではないでしょうか。
このような問題は、高齢者や多くの患者で日常的に生じる現象でもあります。
横隔膜が短縮して「腹式呼吸」への切り替えができず、胸式呼吸ばかりを強いていくと徐々に胸郭への負担が慢性化し、
肋骨や胸骨が疲労して硬くなります。
結果、
肋骨をズラせないために身体パフォーマンスは低下していきます。
※詳しくは下記の記事を参照↓
改善の手立てはある?
さて、このような顧客の問題を考慮する際、
私はよく家に例えます。
体幹をパーツに分けると…
・屋根=胸郭出口
・2階=胸郭
・天井=横隔膜
・1階=腹腔
・床下=骨盤隔膜
といった具合に、
勝手に構造的類似性を「家」に当てはめましたが、
床や1階の柱が弱った状態で2階が重たくなる
=胸郭が腹部や骨盤にめり込み、常に上からプレスした状態になる
これによって、
内臓は常に圧迫された状態になるために下へ下へ逃げようとして、骨盤内に強い緊張を生じ股関節の動きも制限されてきます。
この状態が「内臓下垂」です。
したがって、
これらの問題を解決するには上からの圧をできる限り減らして内臓への負担を除去する必要があります。
スプリング構造の強化
そこで、やはり胸郭の動きに着目してみます。
胸郭はスプリングのように、たわんだりズレたりしながら衝撃を吸収することで肺や心臓を守っています。
それが疲労して硬化してくると、
足回りをガチガチに固めた車のように(昔の自分の愛車のように)、少しの衝撃も吸収しない乗り心地の悪さにつながります。
実際に、
肋骨と肋骨の隙間に手を当ててみると「遊び」が乏しく筋肉(肋間筋や前鋸筋)が張っているのがわかります。
これらの問題に対して、
関節構成体である「胸肋関節」の動きを引き出していきます。
※
肋骨と胸骨の間には「肋軟骨」という軟骨が橋渡しをしている。
特に第2-7肋骨の胸骨肋軟骨結合は滑膜性の関節として可動性がある。
後面には胸椎との関節面である「肋椎関節」があり、胸肋関節と合わせて2ヶ所を軸に上下左右に肋骨は動く(専門的にはこれを 前方/後方回転、 前方/後方滑りと呼ぶ。詳細はまた後日…)。
肋骨の動きは臨床上見落とされがちですが、
・手を伸ばす際には上半身が崩れない土台
・歩く時には重心移動の起点
として非常に重要です。
高齢者や外傷後の患者が大きな動きを嫌う(身体を固めたがる)のは、肋骨が広がらないためにダイナミックな動作には身体の中心に苦痛が伴うからではないか
と考えることができます。
下部肋骨の動きを出していくと、明らかに身体の内側から「ゴリゴリ」という音が響き渡ってきました。
おそらく、
腹腔に圧をかけていた肋骨が持ち上がって
腸へのストレスが解放されたために蠕動運動が再開した(全く動いていなかったわけではなく、動きが制限された状態だったと推測される)
と考えます。
これまでヘルニアを抱えた状態で代償動作を続けてきた結果、
2階や天井に相当する部分が1階を圧迫し続けていたために、内臓にとっては非常に居心地の悪い環境だったに違いありません。
今回は、
たまにしかお会いできないという都合上、結果的にかなり思い切ったエクササイズを提供することとなりました。
胸郭-横隔膜-腹腔-骨盤
という階層構造に対して、
呼吸や姿勢を安定させる筋肉の協調的な活動へとハンドリングした結果、本人
「あー動いた、ぐったりした」
らしいですがその分
「肋骨の動きが分かるようになった」
ようです。
まとめ
最近、
やたらとテーマにしている「肋骨」がメインの話でしたが、
時間がかかった割にまとまりのない文面になってしまいました。
反省・・・
内臓への物理的なストレスを減らして、「ヘルニア」という病理に伴う筋肉の機能不全を解決していくのはこれからなのですが、
少なくとも「二次障害」の要素は改善できることが今回のセッションで分かりました。
リハビリテーションの分野でできることはまだありそうですね。
セミナーに参加される皆さんには、これらの徒手療法の詳細についてご紹介させていただきますのでお楽しみに。
今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。