週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

身体の安定と力の伝達

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

新年度が始まり、

私も異動先での業務に追われる毎日ではありますが、前の職場の仲間のことも心配していました。

 

・・・特に、弟子1号のメンタルが心配。

離れても必ず「修行の日」を作るという約束をして、昨日はその1日目。

 

そんなお話です。

 

 

 

前回の記事↓

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

試合と戦闘の違い

 

そもそも、

このブログのタイトルに示すように私は「平日」と「週末」ではマインドセットが違います。

 

会社員として手を抜いているつもりは決してなく、

あくまで「療法士」に求められる範疇で結果を出します。

 

しかし、

自由診療」という枠においては理屈や決まり事などどうでもよく、

とにかく「顧客の問題を解決して満足してもらう」の一点にのみフォーカスします。

 

この超シビアで世間一般的な療法士からは逸脱した生活様式において、

「経験」は何よりも自分の実力を底上げする要素。

 

故に、

日常場面で同僚に「ちょっと肩診てくれる?」と頼まれる程度では何の抵抗もプレッシャーも感じません。

 

が、

これが「週末の仕事」として依頼されると話は別。

なんせ報酬を頂いて、それに見合う価値を提供する必要があります。

 

 

これは、

ルールの下で行う「試合」と、

生きるか死ぬかの「戦闘」

くらい私にとっては違います。

 

f:id:toratezza0316:20210411055442j:plain

 

 

局所と全体

 

やっと本題です。 

 

前の職場にはリハビリ科以外にも私のことを気にしてくれるスタッフが何人かいて、

今回「ちゃんと時間をかけて診て欲しい」と依頼してくれた看護師さんもその一人。

 

そして、

弟子1号の修行も一緒にしてくれていい、

と、私たちのことを気遣ってくれる優しいその看護師さんの協力のもと、診療を開始。

 

 

「肩がめっちゃ張る」

という言葉通り、外から見ても明らかな程、肩が盛り上がっている。

 

手抜きができない人だから、

自分より大きな重症者の移動とか体交とか、日常業務の負担がのしかかったのだろう…

 

 

こういった問題を「評価」するとき、

 

「局所的な問題」

「全体のバランスの崩れ」

 

どちらを優先的に考えるかによって治療の組み立てが変わってきます。

 

 

例えば、

肩こり患者の問題として非常に多い「小胸筋」の機能障害。

f:id:toratezza0316:20210411060109j:plain

 

肋骨と肩甲骨を繋げる筋肉で、小胸筋が収縮することで肋骨を引っぱって呼吸を助ける

という、非常に重要な筋肉です。

 

肩こり患者の大半にこの小胸筋トラブルがありますが、

重症化してくると肋骨全体が硬化して、

もはや小胸筋だけの問題に留まらず肋骨に付着する筋肉全体が動かなくなる

 

というのが、ざっくりとした

局所-全体

の考え方になります。

 

 

肩の問題を広く診る

 

さて、

腕を真っ直ぐ上げて高い所のものを取ろうとすると、

以前も記事にしたように「ズラす動き」が重要だと言いました。

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

つまり、

地面に足を踏ん張り、推進力を得た状態で上半身を伸ばしていく動き。

f:id:toratezza0316:20210411062041j:plain

 

高齢者の殆どは左の様に身体が安定せず(逆に安定しすぎていることも多いが)、

右のような効率のよい動きを作ることが下手です。

 

アナトミートレインで言うと、

「バックファンクショナルライン」でしょうか。

f:id:toratezza0316:20210411063440p:plain

 

このラインだけで動きを作るわけではありませんが、

 

「身体の安定」「力の伝達」

 

両者のバランスを上手く調整しながら、

 

姿勢制御 と 随意運動

 

をコントロールしているのが健常者です。

 

 

※「姿勢制御」についてはコチラ↓

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

話を戻します。

 

 

目の前の看護師さんも、

やはりこの「身体の安定」と「力の伝達」というパワーバランスが崩れており、

「過度に安定している状態なのではないか」

と仮説を立てます。

 

それに対して、

不足している「力の伝達」をコンセプトとしたエクササイズを提供することで、

「安定しすぎな状態から、力が伝達しやすい状態に戻ってくるのではないか」

 

と臨床推論を立てることができます。

 

 

そして、

動きを作るポイントは

「如何に反対側の骨盤を連動させるか」

という視点で診ていくと、治療の幅がとても広がります。

 

※この辺りのハンドリングに関しては、来週のセミナーで紹介しますね。

 

最終的には

・親指が同側の腋窩に付く

・肩の張りが消える

・頸の動きに違和感がなくなる

・胡座(あぐら)姿勢で両肘が床に着く

・上肢を最大挙上しながら同側の坐骨への荷重をキープできる

 

など、明らかなパフォーマンスの改善を自覚されました。

 

 

 

獲得した動きを維持する

 

ある程度パフォーマンスが獲得されると、

セルフで機能を維持していくことが対象者には求められます。

 

身体の柔軟性やパフォーマンスを維持するための「ストレッチ」が必要になるのですが、多くの人は

「1日1回、しっかり時間を取ってやらないといけない」

と思いがちです。

f:id:toratezza0316:20210317064815j:plain

しかし、私は

「1回に費やす時間は10秒でもいいから、何十回でもやる」

ことを強くオススメします。

 

それは、

身体に「この動きは日常的に必要な動きだ」ということを学習させるためです。

 

 

人間は普段高頻度に使っている関節の動きは忘れませんが、

あまり日常使用しない可動域については忘れていきます。

 

 

例えば、

外傷などがない限り「肘の曲げ伸ばし」を忘れることはまずありませんが、

「股関節を最大限伸ばす」ような動きは歳を取るほど忘れていきます。

 

それが「硬さ」に直結するわけですが、

そもそも「使わないから」です。

 

使わなくなった場所は感覚も鈍っていき、固める方向に身体が変わっていきます。

すると、「安定」はしますが「力を伝達する」能力はどんどん失われていきます

 

そういった、

失われがちな能力を掘り起こすのはセラピストの役割に他なりませんが、

それを「学習」して定着できるかどうかは学習者の役割です。

 

もっとも、

定着せず硬い身体に戻ってしまうことはしょっちゅうです。

どうしても身体は安定している方が「楽」だからです。

 

それは学習者の責任というよりも身体の抵抗勢力ですので仕方のないことですが、

「変わりたい」という意思のある限り少しずつですが変化を積み重ねていくことが重要だと思っています。

 

 

 

まとめ

 

今日は「身体の安定」と「力の伝達」についての友人の治療について記事にしました(長文になりましたが…)

 

記事にすることでご自分の課題をより深く知っていただき、

私自信や弟子の勉強にもなると思ったからです。

 

職場を離れてもこうしてお会いできることや、

信用してもらえていたことを、私自身も嬉しく感じた1日でした。

これからも私にお手伝いできることは頑張りますし、弟子1号共々お世話になります。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。