週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

「魔法の手」を持つということ

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

ドタバタの異動騒動も落ち着き、今月から異動先での会社員生活がスタートしました。

異動直前は、色んな人に声をかけてもらって、たくさん感謝の言葉を頂き「なんやかんやでいい職場だったなー」と思いました。

 

さて今日の記事は、異動先での出会いについて。

 

 

前回の記事はコチラ↓

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

 

環境の違い

 

 

同じ事業団の運営施設でも、場所が変わればそこにいる人や環境は当然変わります。

 

私がこの度異動した先の施設は、療育センターと同じように重度の心身障害を抱えた利用者が生活しています。

 

このご時世、

医療福祉の現場は感染対策を徹底する必要があるため私は病棟専属のスタッフとなりました。

 

これまでと一緒ですが、施設の規模が同じであることに対して病棟配属のセラピストは私を含めて3人となります。

 

前の施設では7人(PT,OT,ST合わせて)で診ていたことを考えると、単純にマンパワーが半分以下になったわけです。

 

ただし、

セラピストの「個の力」を観察する限り、私はこの3人でも十分だと感じました。

 

なぜなら、

ここの古株セラピストの実力が非常に高いと感じたからです。

 

 

「魔法の手」とは

 

私がここへ来た初日、

私に引き継ぎをして外来業務へ移動する作業療法士は言いました。

 

「PTのFさんは魔法の手を持っている」と。

 

 

「魔法の手」とは、

セラピストが自分の手で変化をもたらすスキルを持っているということ。

 

 

私はFさんの治療を自分の目で見るために見学をお願いしました。

 

するとFさんはふと私の手をとり、

「橈骨骨膜」を優しくタッチした状態で暫くそのまま私の肩を見ています。

 

数秒後、自分の胸郭が徐々に広がってくるのを感じる私。

 

Fさん「これが何か分かる?」

 

私「小胸筋の活性化に伴う肋骨の引き上げです!」

 

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つまり、

Fさんは私の「橈骨」を触れただけで筋連結している(構造的につながってる)「小胸筋」の運動機能を高め、

胸郭を引き上げ深い呼吸をもたらすという小胸筋の重要な作用を強化したわけです。

 

 

これが「魔法の手」の正体。

 

 

重症患者に対してセラピストが与えられる価値の一つ、

「いかに楽に過ごせるか」

という考え方をこの人は持っている。

 

そして、それには

肋骨や胸骨、肺の動き

横隔膜のポンプ作用

内臓の可動力

自律神経系のバランス…

 

このような臨床思考をしっかりと持っている。

 

 

こんな所にも「職人」がいた!

 

 

私は全身の細胞が喜ぶのを感じました。

 

 

そう、

魔法の手なんてものは存在しません。

 

自分のスキルを磨き上げ、築き上げた臨床思考と経験によって最適な仮説・検証作業を行う「努力の手」の持ち主。

 

それが私の目指すセラピスト像です。

 

目の前の年配セラピストは、正にそれを体現している。

 

 

理学療法作業療法が世間的に認知されていなかった当時から、

自分の手で何かを変えたいという一心で色んな知識を吸収し、自分を叩き上げてきたことが会話しているだけでヒシヒシと伝わってきた。

 

そして、

一度は定年退職した今でも奢ることなく、学ぶことを諦めていない。

 

こんな人が職場にいたら、若手のセラピストはみんな憧れるに違いない。

 

道理で、ここのセラピストは病棟スタッフからの信頼を得ているはずだ。

 

おそらく、

外来業務をしているセラピストもある程度スキルを持っているだろう。

 

 

 

どうしよう。

今までいた環境と違いすぎる。

こんな職場は初めてだ。

嬉しくて笑いが止まらない。

 

自分はこの環境において、まだまだレベルアップできる。

そうして、寅丸塾にも還元できるに違いない。

 

セラピストの頭数よりも、

個の力を磨くことの重要性を改めて感じた2日間。

 

これから同じ目線で会話できるだろうし、

この人なら自分の甘い所を指摘してくれたり助言をくれるに違いない。

 

 

 

まとめ

 

異動先での出会いに感謝。

 

組織全体の質を高めるには、やはり「上」に立つ者が強烈な光を放っていることは重要だ。

 

後輩を見下したり率先してサボるような者のいる組織に発展性などない。

年功序列」という制度に何の疑問も持たず楽をしてきた者には分からないかも知れない。

 

ただ、

自分はこの先も職人として自分の「努力の手」を奢らず誇り、鍛え抜いていきたい。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。