週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

問題には一次障害と二次障害がある

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

  

最近の記事は、子どもの療育に焦点を当て徒然なるままに書き留めた訳ですが・・・

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

日常業務の内、もう一つ重大なテーマがあります。

 

 

 

重症心身障害者と呼ばれる人達とは?

 

私の職場には、重症心身障害者と呼ばれる人達が入所されています。

 

重度の肢体不自由と重度の知的障害とが重複した状態を重症心身障害といい、その状態にある子どもを重症心身障害児といいます。
さらに成人した重症心身障害児を含めて重症心身障害者と呼びます。

 

平たく言うと、

自分の力では起き上がることも坐ることも出来ない、手足はもちろん背骨や肋骨も変形して歪んでいるために何かを持つことや両手を合わせることも難しい身体機能

また、成人になっても3歳以下の知能しか持たないために身辺処理や言葉を使ってコミュニケーションを取ることができない

 

このような障害を合わせ持つ方を指します。

 

つまり、食事から下の世話まで生活のあらゆる面において常時介護が必要で、自分一人では命を守るどころかかゆいところを掻くこともできないわけです。

 

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とまあ、ざっと挙げてみましたが何となくイメージが湧いてくるでしょうか。

 

 

そんな彼らに接触する機会を得て半年あまり経ちましたが、

セラピストとして何を提供するのが正解なのだろうか?

 

 

 

一次障害と二次障害

 

脳梗塞や外傷といった、いわゆる後天的な障害と違って、

彼らの問題は先天的なもので治癒することはまずありません。

 

しかし、患者の病名や年齢・特性に限らず生存や目的志向において、

「苦しい」

「痛い」

「辛い」

といった苦痛を取り除くことが最優先課題であると私は認識しています。

 

 

以前も紹介したことがある「マズロー欲求段階説」に、再び登場していただきます。

 

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人間の欲求は階層的になっており、基本的に低次な欲求が満たされない限り高次な欲求には至らない

ということです。

 

ということは、生命維持活動自体が危ぶまれている状態では、健康云々はもちろん所属感や認められたい・能力を発揮するしない以前に、

身体を構成している

筋骨格系・内臓系・神経系・循環器系・経絡系

が、一定水準以上生命活動に貢献している状態を作っていく必要がある

と考えます。

 

 

そこで、

重症心身障害者と呼ばれている方の問題点(傾向)を挙げていきます。

 

脳性麻痺の影響で全身の筋肉が緊張し、スムーズな運動が殆どない

先天的な奇形(原因は不明)により主に脊柱側弯(背骨が捻れたり左右に弯曲する)や肋骨全体の形が崩れており、自分の骨格自体が体幹を圧迫している

人によっては人工呼吸器で外から酸素を送り続けないと死に直結する

口から食べ物が食べられる人は決して多くなく、鼻腔からチューブを通したり胃ろう(胃に直接孔を開けて食事を胃に直接流し込む)という手段に頼らざるを得ない

知的は発達は殆どなく、乳幼児と同等の知的水準

・・・

 

これらは現代医学ではどうする事も出来ない、身体構造(+精神機能)上のハンディキャップで一次障害と呼びます

 

 

それに対して、リハビリテーションの範疇で対応するべき問題を二次障害と呼ぶことにしましょう。

この二次障害をどのように捉えるか?

が最も重要なポイントでしょう。

 

例えば、

骨格に奇形があり、背骨が捻れて曲がり体幹が文字通り「くの字」になっている利用者は、それ自体はあくまでも「外観上の特徴」でしかありませんが、

本来筒状(楕円形)であるはずの体腔(体幹の内部空間)が捻れをおこすことで、そこら中に過剰なストレスを生じさせます。

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クネクネと流れる河川を例に挙げると、

カーブでは内側よりも外側では流れる水の量が多く、速い流れが作りだす力が反対側の岸に向かう流れを作り出し、土砂が多く流されて浸食が進みます。

 

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つまり、

骨関節の変形は、長期的に見ると身体の内側をえぐる形で筋筋膜的な損傷・圧迫を加えている

ということになります。

 

 

かつて、筋膜と内臓の関係性について記事にしたことがあります。

toratezza0316.hatenablog.com

 

簡単に説明しますと・・・

 

我々の身体の中にある臓器は腹膜や腸間膜と呼ばれる膜・靱帯などによってある程度固定されており、そのおかげで姿勢を変えても臓器がズレることは少ない。

 

身体の内側の膜は体表面の筋膜とつながっているため、深い部分でパフォーマンスの善し悪しに直結する。

例えば肝臓を包む膜が何らかの原因で縮んだ状態では腕を挙げようとしても肝臓自体の動きが伴わないために腕が挙らない

腎臓が疲労することで隣接する脊柱の周囲の筋肉を引っ張り、腰痛という症状が引き起こされる。

 

 

奇形という構造的な問題は、

水の流れで徐々に川を浸食していくように筋膜・腹膜レベルで様々なトラブルを慢性化させていくことが予想されます。

 

この仮説が正しければ、

捻れた膜組織が臓器を締め上げることで臓器の出力を落としている

結果、

生命を維持するシステムが働かない

可能性があります。

 

生命を維持するシステムとは、

血液を作る・循環させる機能

古い血液を壊す機能

免疫反応

消化吸収機能

排泄機能

ホルモン調節

 

等です。

 

 

これらの機能障害を二次障害と捉えると、リハビリテーションの意義が明確になっていきますね。

 

 

さらりと進めるつもりが、久し振りに内臓に関する話になり調子に乗ってきたため情報過多になってしまいました。

 

次回に続きます。