脊柱管が狭いという現象にとらわれず筋筋膜性のトラブルを見極める
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脊柱管狭窄症について、前回から記事にしています。
加齢や肉体労働などをきっかけに脊椎の構造が変化することで、
その中を通る脊髄が圧迫され様々な不具合が生じるのが脊柱管狭窄症という病名です。
ただし、
運動障害(麻痺、脱力感)や感覚障害(脚の感覚が鈍くなる)という問題は生じても、
「痛みやしびれ」といった問題はどこからくるのか?
全ての問題を「脊柱管が狭くなったせい」にするのではなく、
筋筋膜性の機能障害の可能性を考慮することで、
少なくとも本人の抱える苦痛を緩和する適切な運動療法が提供できるかもしれない
というお話でした。
さて、
いつものように実例を交えて脊柱管狭窄症の方のリハビリテーションについて考察していきます。
その方は数年前から脚全体が痺れており数100m歩くにも休憩が要るという、
典型的な間欠性跛行(かんけつせいはこう)の症状が出現していました。
整形外科や整体にはさんざん通ったけれども特に改善の兆しはなく、
それでも根性で農作業はこなす、
と非常に健康寿命が危ぶまれるような状況にあります。
初見の時点でいかにも辛そうな歩きっぷりであったため、
全身の緊張が慢性的に高く常に身体を固めて動いていることが見て取れます。
人間の身体は基本的に伸筋よりも屈筋が優位であるため、
身体構造にトラブルが起こると軒並み屈筋が優位に作用し背中を丸めて防衛的な姿勢を取る傾向になります。
そして、
1つの筋肉(骨格筋)はどの部位であろうとも伸びる・縮むという2通りの動きしかしませんが、
どちらか一方に偏る(縮みっぱなし・伸びっぱなし)ことで筋肉自体に栄養を届けている血管や神経を締め付けることになります。
これらの原理原則的な考え方に基づいて病態を考慮すると、
長年の肉体労働から骨関節の構造変化をきっかけに、
伸ばす筋肉よりも曲げる筋肉の活動が相対的に高まり姿勢制御が破綻した状態
と見なすことができます。
※姿勢制御についてはコチラ↓
ここで言う姿勢制御とは、重力に逆らって身体を持続的に直立位に保つ筋肉のことを指します。
中でも、大殿筋は筋自体の面積が非常に大きく強い収縮力で身体を支える筋肉であるため、前傾姿勢を取りがちな患者さんがトラブルを抱えやすい部位です。
この方に身体を捻る動作や腰を反る動作をやってもらうと、
驚くほど動きが少ない上に脚のしびれが強くなる
という現象が起こります。
それに対して、
大殿筋の特定の部位に外から圧迫をかけた状態で同様の運動をしていただくと、
「さっきより動きがよくなった」
「痛みやしびれた感じが減った」
などの変化が生じます。
つまり、
姿勢をつくる上で重要な大殿筋がバカになり、
下流である大腿部~足部への血流障害や神経絞扼(締め付けること)を起こしていた可能性を大いに疑います。
他にも問題はあるのですが、骨盤という土台を整えることを優先課題としてエクササイズを提供していきます。
年単位で運動機能が低下している状態なので決して改善のペースは速いとは言えませんが、
リハビリテーションのテーマが定まることで明らかに痺れる範囲が狭くなり今まで痛みのため困難だった「あぐらをかく」という動作が出来るようになってきました。
肝心の歩行はというと、
農作業後など疲労時でなければ「歩こうという気になれる」
と、徐々に適応しつつあります。
というかパッと見た感じの辛さがかなり改善している。
世間的には「痛い・痺れる」という現象は病院で診てもらうもの
薬で押さえ込むもの
という認識がまだまだ強いです。
もちろん急性症状で投薬や手術しか選択肢がない場合もたくさんあることは十分に分かっています。
ただし、
適切なフィジカルアセスメントによって解決出来るものも少なからずある
ということも徐々に認知されていけるよう、
微力ながらこうして発信し続けていこうと思います。
今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。
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