週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

あれから2年。

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

 

今日はいつもの話とは全く関係ない話。

 

 

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2019年7月18日。

二年前の今日、戦後最悪の放火事件が起こった。

 

京都アニメーション放火殺人事件。

 

36人の社員が犠牲となり、その中には私の旧友がいた。

 

 

西屋太志さん。

 

広島県出身の彼とは、保育所・小学校・中学校まで毎日顔を合わせる仲だった。

www.sankei.com

 

子供のころから絵が上手く、

物静かで自己主張をする人ではなかったが、

勉強もスポーツもそつなくこなし、

その穏やかな人柄からいつも周りに信頼されていた。

 

そんな彼をうらやましく感じながらも、私自身も彼が大好きだったのでよく家に遊びに行った。

 

 

あれから30年弱。

職人として彼は認められ、作画監督として順風満帆に思えるほどの活躍をしてきた。

 

ただ、

そこに至るまでどれだけの努力をしてきたかそばで見てきたわけではないが、

私自身も職人の端くれなので、何となく分かる。

 

 

それだけに、

この事件をテレビで知ったときは手が震えた。

 

 

きっと、

あの場所にいた方たちは希望にあふれた将来有望な職人がたくさんいただろう。

それでも彼だけは無事でいてほしいと思ってしまった。

 

かなわぬ思いだったが。

 

 

 

この事件の犯人の名前を思い出すこと自体腸が煮える思いだが、

それでもこの男は刑を執行されるまでは生きて、残された人達に真実と心からの謝罪を述べていく義務がある。

 

この男を治療に当たったすべての医療従事者には本当に頭が下がる想いだ。

 

会話はできるようだがあらゆることに介助が必要な状態らしい。

リハビリテーションを指導する人はいるのだろうか。

そもそもリハビリテーションの適応なのだろうか。

きっと、業務命令であっても自分にはあの男の治療にあたることはできないだろう。

 

・・・そんなことはどうでもいい。

 

 

私は今も西屋くんが幼少期を過ごした町で過ごし、

自分の子供にも同じ保育所、同じ小学校に通わせている。

 

焼香に伺ったご実家には、今もご両親が傍目には元気で暮らされている。

 

どうか、これからもお元気で過ごされてほしい。

 

私たち同級生も、

彼のことを忘れることなく、「日常」を大切にしていきたいと思う。

 

事件から2年が経った今、

事件のことを忘れないためにこうして書き残すことにした。

 

www3.nhk.or.jp

 

最後に

 

私は彼の幼少期の友人の一人にすぎない。

が、

私も一人の職人として、彼の分まで悔いのない職業人であり続けようと思う。

 

彼の手掛けた作品が、一人でも多くの人に見てもらえることを心から祈って、

追悼の意を表する。

 

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今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

軽い足をつくる

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

前回に引き続き、解剖に振った話です。

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

 

  

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足が腫れる問題

 

私は学生の頃、何よりも優先して解剖学を勉強していましたが、

いざ仕事に就いてみるとその知識も中々活かすことができませんでした。

 

臨床では、疾患や障害名に関わらず、セラピストが対応出来る範疇で問題を鑑別し価値へと変換する「生きた知識」が必要です。

 

 

さて、

前回はコンパートメントという問題について言及してきましたが、

同じくらい高頻度に遭遇する問題が「足の腫れ」。

 

何なら、

病院で出会う患者の殆どが大なり小なり抱えている問題の一つではないかと感じるほどです。

 

 

割と有名な考え方ですが、

第二の心臓と言われるふくらはぎの筋肉がポンプの役目をしており

その筋肉が硬くなったり疲労することで、足の血流が戻らなくなり「腫れ」たり組織内の圧が高まって「張る」

といった現象が起ります。

 

つまり、

血の流れと筋肉の関係は非常に重要になってくるわけですが、入院患者は基本運動不足なのでこのような問題を抱えるのは当然と言えば当然かも知れません。

 

 

 

動脈と静脈

 

改めて解剖学的な構造を含めて復習していきます。

 

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ざっと下肢の主要な循環系を整理してみました。

これだけでもまぁまぁ自己満足するくらい復習になったわけですが・・・

 

※ここから暫くはウンチク的な専門用語が続きます。面倒くさい方は飛ばしていただいて結構です。

 

心臓から送り出された動脈血は腹大動脈を経て、

外腸骨動脈→大腿動脈→膝窩動脈

と名前を変えながら、周囲に枝を出しながら膝まで到達すると、

・下腿の前面を前脛骨動脈→足背動脈

・下腿の後面を後脛骨動脈(+腓骨動脈)→足底動脈

となって、それぞれに対応する組織を栄養します。

 

 一方、

心臓へ戻っていく静脈血は、

動脈と同じルートを辿って上行するもの(=深部静脈系)と、

皮膚の表面に近い、浅い所を通るもの(=表在静脈系)、

それら深部静脈系と表在静脈系を結ぶ「交通枝」

に分類され、末梢まで巡った血液を回収します。

 

ちなみに、

動脈は心臓が押し出す血液の圧力に耐えるために血管壁が平滑筋で厚く覆われており弾性がありますが、

静脈は心臓に送り返す血液の量に応じて太さが変化しやすいように、血管壁は薄く柔らかいつくりです。

また、下から上に血液を送る構造状、逆流を防ぐための「弁」が至る所に存在します。

したがって、元来静脈は血液が溜まりやすい構造なのですが、それを押し流すのが「足の筋肉」の役目です。

 

足の筋肉の疲労や弾性の低下によって、

・動脈に対しては強い圧をかけて流れを止める

・静脈に対して押し流す役割が果たせない

ことが、循環血流の問題を来たし、結果的に浮腫みという症状を引き起こす場合があります。

※内臓系の疾患による影響はここでは除外している。

※心臓へ戻る血液の内、深部静脈系は85%、表在静脈系が15%の割合で還流させている。表在静脈系には側副血行路の役目があるため、メインである深部静脈系が詰まった時に交通枝を介して表在静脈へ流入する。

 

 

我々セラピストは、

循環障害を来たしている患者に対して直接血管をどうにかできる立場にはありません。

ので、その周囲の組織の問題を取り除くことで、結果的に症状が緩和循環への影響を軽減することができれば、十分な価値を提供したと言えそうです。

 

 

 

 

臨床に落とし込む

 

話を戻します。

以前も記事にした、空手少女の「その後」。

toratezza0316.hatenablog.com

 

以前よりも肩の疲労は減りましたが、

動きを観察していると足首が硬く踏ん張りがあまり利かないために構えや技を出す時に前傾姿勢になりやすいように見えます。

 

また、

下腿全体が張っていて「浮腫みやすい」、足を持ち上げる時の重さ、片脚立ちの不安定さ・・・

母親も、そこが気になっておりしばしば足をマッサージしているようです。

 

そこで、

後脛骨動脈を触知してみると、「脈がとりにくい」です。

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※後脛骨筋は後方深区画に位置する深層筋

 

後脛骨動脈は、下腿の後面の深層を通る動脈で足底まで伸びる重要な動脈です。

 

そのすぐ側を走る後脛骨筋は、下腿を輪切りにするとちょうど「真ん中」にあります。

周囲を骨・筋肉で囲まれているため、しばしば周囲の組織からの圧力に晒される筋肉です。

 

また、

足首付近では足の指を曲げる筋肉である「長趾屈筋」「長母趾屈筋」とも交差します。

上手く踏ん張れない人は足の指に力を入れやすい傾向にあるために、過活動になりやすく押さえると痛みが伴いやすい部位です。

 

細かい筋肉の説明は省きますが、

この症例においても「内くるぶしの3横指上」の下腿交差部位で後脛骨筋の強い痛みと、

後脛骨動脈の拍動の弱さが見てとれます。

 

つまり、

・脚全体の張り

・脚の重たさ

・足首の動きの悪さ

・片脚立ちのバランスの取りにくさ

 

という問題に対して、

後脛骨筋を中心とした深層筋群の内圧を軽減、

適切な滑走状態をつくることで後脛骨動脈へのストレスも開放されると、

貯留していた血流も循環しやすくなる

結果、パフォーマンスは改善する可能性があります。

 

 

徒手的に深層筋を操作して後脛骨動脈を触れると、

・最初よりも明らかに脈がとりやすい。

・脚が軽く感じる

・脚が細くなった

・足首を起こしやすくなる

・バランスは…多少アップ。

 

とまぁ、

複数ある問題の内の1つはこういった筋肉と血流の問題がリンクしている

ことを改めて感じました。

 

マッサージするポイントや、ストレッチの方法を伝えてセルフメンテナンスを習慣化するように持っていきましたが、パフォーマンスを低下させないという意味では一番重要な課題だと感じます。

 

 

 

まとめ

今日は前回の続きを話したくて下肢の血流について考察してきましたが、

あれこれと専門用語を使ってしまい、まとまりのない記事になってしまいました。

 

ですが、

・どこかが上手く使えてないとどこかにしわ寄せがくる

・筋肉の問題だけではなく、循環の悪さにもつながる

・それらを見極めて変えられる所から変えていく

 

という原則的な思考が、基礎的な知識に基づいて臨床推論として多くのクライアントに提供していけると臨床業務も楽しく感じられるのではないでしょうか?

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

 

区画に分けて考える

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

今回から何回かに分けて、基本的な解剖学の話を記事にしていこうと思います。

 

 目次

 

 

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脚の役割

 

私は作業療法士という立場上、肩や肘を診る機会が股関節や膝を診る機会よりも圧倒的に多かったため、対象者の問題を肩中心に考える傾向が強いです。

そして、下肢について学ぶ時には「症状」と結びつけて考えるようにしています。

 

先日、

作業療法士の後輩を指導しながら、

苦手意識の強い「脚」をどう診ていくか?

という、過去の自分を思い出しながらあれこれと話をしました。

 

ヒトにおける一般的な下肢の役割は、

・体重の支持

・移動

に尽きます。

 

当然、立位では常に荷重がかかります。

スポーツをやっていれば、体重の何倍ものストレスをかけながら動き続けるために、年齢を問わず疲労が蓄積する部位です。

また、肉体労働を何十年もしてきた高齢者の腰や膝は、負荷に晒され続けた結果、不可逆的な変形を伴う痛みや循環障害、神経症状などを来たしている人も少なくありません。

 

 

そのような症状を抱えている人の脚を診る時、主要な選択肢として

コンパートメント症候群

を疑ってかかります。

 

 

 

コンパートメントについて

 

コンパートメントとは「仕切られた1区画」という意味です。

便宜上、身体の各部を解剖学的に仕切ることで、問題を把握しやすくなると私は理解しています。

 

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図のように、

下腿(すね)を輪切りにすると、いくつかの区画に分けることができます。

・前区画

・外側区画

・後方浅区画

・後方深区画

 

これらの区画を隔てるのは骨や骨幹膜、中隔と呼ばれる筋膜です。

※筋間中隔=骨と最外側の筋膜に付着して、その部位の筋肉をいくつかのグループに分けている結合組織性の隔壁

イメージ↓

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区画の壁を構成する骨や骨間膜、中隔はいずれも強靱なため、1つの区画内で筋肉が腫れたり、出血や浮腫などが起こるとその区画の内圧が上昇します。

 

すると、

その中を通る血管や神経は圧迫され障害されます。

循環障害により壊死をきたしたり、神経障害が後遺障害となることもあります。

 

 

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コンパートメントへの対応

 

明らかな神経麻痺や、変色や冷感など重篤な問題があれば即受診する必要がありますが、

立ち仕事や運動後に何となく足が痛む、痺れるといった程度の問題であれば、ストレッチやマッサージによって症状は割と緩和する傾向にあります。

 

 

経験上、

前区画の筋肉、特に「前脛骨筋」のオーバーユースによる炎症を引き起こしているケースが多いように感じます。

 

前脛骨筋は、教科書的には

・足首を持ち上げる(背屈)

・足の裏を内側へ向ける(内返し)

という動きをする筋肉ですが、

これが日常的にどう生きてくるかというと、

 

・足を床に着地する時のブレーキ(緩衝)

・足の裏の丸みをつくる(内側縦+横アーチ)

 

という、

歩いたり走ったりするときに身体にかかる衝撃を緩和するために非常に重要な筋肉です。

 

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ブレーキが利かないということは、足を床にぶつける様に着地する(=常に足を痛めるリスク)ということを意味しますし、

扁平な足よりも丸みのある足の方が衝撃に対する緩和機能が高いことは容易にイメージできると思います。

 

前脛骨筋の弱い子どもや高齢者は、何とかブレーキを利かせるために強い力でつま先を引っ張り上げようとしますが、

そもそも上手く使えてないために「足の裏を内側に向けながら引っ張る」結果、足の小指側で着地するような動きになりやすく、捻挫のリスクがあります。

 

足元だけの問題では決してありませんが、こういった問題に対して

①前脛骨筋がしっかりと伸びる位置に持っていく

②同じ区画内の筋肉である長趾伸筋や長母趾伸筋の滑走を強化する

③骨間膜を介して隣接する後脛骨筋を働かせる

といった対応を考慮する必要があると感じています。

 

実際には、図のように①に関してスタティック(姿勢を維持する)なストレッチを実施しつつ、徐々に身体操作の要素を増やして②・③にも波及していきます。

 

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もちろん、

リハビリテーションにおいては徒手的な操作を加えることも重要ですので、セラピストは解剖学的な位置関係をしっかり把握していけるといいですね。

 

歩行における前脛骨筋の役割に関して掘り下げていくとキリがなくなるし、色んなサイトでも専門的に解説してあります。

ここでは硬くなった前脛骨筋を柔らかくして、周辺組織への過度な圧力や絞扼性障害を軽減することが重要だ

ということを理解していただければ十分です。

 

 

まとめ

 

今回は、解剖的な話をメインにコンパートメント症候群についてフワッと解説してみました。

 

下肢のトラブルは体重支持と移動に直結するため、単体での問題に留まることは殆どありません。

ただ、主要な問題と二次的な問題といった要素を区別するために、部位に限らず正確な知識は持っておきたいところですね。

 

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

 

 

振り返るついでに思い出したこと

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

6月最後の週末が終わろうとしていますね。

この1ヶ月は我ながらよく頑張ったと褒めてやりたい(笑)

※今日はウンチク的な記事ではありません。

 

 

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5月の後半から先週まで、

ここ広島県は「緊急事態」とのことで、毎月恒例の勉強会の中止を余儀なくされた。

その穴埋めとして、何人かの塾生に個別指導の時間を取っていたのだけど・・・

 

自分の休まる時間がない!

 

と薄々気付きながらも、塾生とゆっくり喋る機会も大事だなと思い頑張ることにした。

 

 

 

 

思えば、

この塾をスタートしてから丸2年経つ。

 

私が療育センターに赴任した2年前、

平日は1サラリーマンとしてのらりくらりとやっていくつもりだった。

 

「重症心身障害者」

なんて分野に特別興味はなく、

ましてや同僚に何かを伝えようとも思わず・・・

 

 

しかし、

現場のレベルは低かった。

 

職人として雇われたはずなのにエンターテイメントに参加させられる日々(笑)

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

この茶番を終わらせたくて、少しずつ素を出していくことに。

 

暫くすると、

力をつけたい、教えてほしい

って言ってくる人が出てきた。

 

え、ホントにやる気あるの?

多分すぐ嫌になるよ?

と、これまでの不遇な経験から半信半疑なまま仲間内で始めた閉鎖型セミナー。

 

気がつくと、

その時の人達はずっと自分を追いかけてくれるようになった。

・・・こりゃ、普段から気が抜けなくなってしまった。

 

いつの間にか途中からの参加者も増えて、まぁまぁの所帯になってきた。

 

元々HSP気質の自分は、大勢の前で喋ること自体は苦でないが

「この場にいる1人1人にとって、知りたいことが伝えられているか?」

が回を重ねる度に気になってきている。

 

そういう意味で、

塾生1人1人と時間をとれるチャンスは大切にしたいと思った。

 

 

自分が若手の頃、

「年取ったときにあんなセラピストにはなっていたくないな」

「それには実力つけないと・・・」

という一心で、相当な時間と費用を費やして全国の色んな研修に参加しては修行してきたつもり。

 

塾生にも当然、それぞれ色んな想いがある。

 

・とにかく結果を出せるようになりたい

・色んな技術を知りたい

・周りに信頼できる人がいない

自分自身を含めてリスク管理ができない(!?)

・困っている人の役に立ちたい

・自分の身体を整えたい

・自分の専門領域に拘らず見識を深めたい

etc・・・

 

要するに、

職人として純粋に力をつけたいが学べる場がない

ことで、

悔しい思いをしたり悩みが解決しないまま悶々としている

ということ。

 

 

今回、できるだけ公平に声をかけて自分の休日を殆ど潰しながら家庭教師まがいの仕事をしてきたが、

結果的には「やってみてよかった」。

 

集団の中では言えないことも色々聴かせてもらった。

特に、自信がなさすぎて自分の方向性を見失っている塾生には最終的に

「修行するしかねーだろ」

と一括することになったが。

 

 

あと、

当り前ではあるがそれぞれ関心のあるテーマが違うので、今後のセミナーの在り方については参考になったかな。

自分自身も割と時期によってブームがあるのであれこれ器用にはこなせないけど・・・(ちなみに今はスポーツ系)

 

 

 

最後に。

自分がこうやって「週末に本気出せる」のは、妻の理解と協力があってこそ。

独身なら何も考えずに好きに動けるけど、

家庭を持つ身になると自分の好きなことばかりはできない。

それでも自由にさせてもらえていることに、自分に対する信頼と愛情をいつも感じる。

とても感謝してる。

なので、

せめて家族に心配させないように、優先順位を見失わないように、手に届く範囲でサポートできるところは頑張ってみようと思う。

 

 

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

運動音痴についての考察

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

 

先日からスポーツにおけるパフォーマンスアップに関する記事を書いております。

その中で、

その競技の動きばかりを練習していても中々上達しない理由や、セラピストはどのような点に注目し、介入する余地はあるのか?

といったことに言及してみました。

toratezza0316.hatenablog.com

 

今日の記事は、「運動音痴」について考えていきます。

※このブログはリハビリテーションの専門家が書いておりますが、一般の方に伝わるよう可能な限り難解な表現は避けております。難しい表現や議論が好きな方は、どうぞそういったサイトで白熱してください。

 

目次

 

 

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運動音痴とは?

 

ものすごく個人的な意見ですが(そもそもブログとはそういうものだが)

子どもにとって運動が得意か不得意かというのは、学校における自分の立ち位置(ヒエラルキー)を形成する上でまぁまぁ死活問題だと思っています。

 

ので、療育現場でも診断名に関係なく

「ウチの子運動がとにかく下手なんです」

「何とかなりませんか」

系の相談はかなり多いです。

 

もっとも、私の見た現場では

「苦手なことを克服するよりも得意なことを伸ばしましょう」

的な説得に走るセラピストの姿を何度も見てきましたが。

 

 

さて、

療育に限らず運動の苦手な人を世間では総じて「運動音痴」とディスったりするわけですが、

この運動音痴とはどういうものなのか?

 

 

例えば「ボールを投げる」という動作は、

・投げる方向に対して身体を半身にする

・後の脚に一度体重を乗せて溜めをつくる

・前の脚に体重を移動する(並進運動)

体幹を回転させて勢いを上(肩)に伝える

・腕をしならせて外から内へ振り下ろす

・ボールの軌道やスピードを手元で調節

 

ざっと適当に挙げてもこのくらいの要素に分けることが出来ます。

 

つまり、

全身の協調運動によって成立する動きであり、

このような各筋肉や関節が連動することでパフォーマンスを発揮する現象を、専門的には

運動連鎖(キネティックチェーン)

と呼んでいます。

 

 

もちろん、

・力が強い/弱い

・身体が柔らかい/硬い

・手先が器用/不器用

という要素はパフォーマンスを高める上で重要ですが、

「うちの子運動音痴なんです」

に該当する子どもの多くはそもそも、この「運動連鎖」に問題を抱えていることが圧倒的に多い印象です。

 

 

運動連鎖の概念

 

さて、

多くのリハビリ現場は未だに「とにかく筋力を鍛えること」をよしとする傾向にありますが、一言に「鍛える」といっても様々です。

 

1.開放運動連鎖

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これらは多くのリハビリ現場で見られる筋トレです。

説明するまでもなく身体の特定の部位を鍛える運動ですが、

全てに共通する特徴としては

「末端が固定されず空中に浮かせる動きである」

ということ。

そして、

使う筋肉や関節を選んで動かすため、「この筋肉を鍛えたい」というピンポイントなトレーニングがメインになります。

これを開放運動連鎖(open kinetic chain)と呼びます。

 

 

 

2.閉鎖運動連鎖

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最近注目されつつあるのが、このように四肢の末端が固定された状態で身体を支えるトレーニングです。

個別の筋肉や部位を使うのではなく全体をバランス良く使うことが求められ、より目的的な動作を高めるために選択していくべき動きです。

これを閉鎖運動連鎖(closed kinetic chain)と呼びます。

 

 

 

 

多くの患者は身体を上手くコントロールできない、思うような運動できない

という問題を抱えていますが、

単純に「〇〇筋だけが弱い」「△△関節の動きだけが悪い」のであれば開放運動連鎖を用いたトレーニングで解決するかもしれません。

 

ただし、

あらゆる日常動作は全身の協調運動によって成り立っています。

 

例えば「起き上がる」という動作一つとっても、

手を上げる・足を上げるといった筋力よりも床に対して身体を押し上げる力や、その動きに伴って身体がバランスを崩さない

といった局所と全体の調整能力が必要です。

 

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つまり、

重力に抗して身体を操作するためには、より多くの筋肉が過不足なく円滑に働く必要があります。

 

これまで何度か言及してきましたが、

多くの患者の動きの特徴は「力任せ」になりやすく、「筋肉自体は動いていても微調整が苦手」なため疲れやすいと説明してきました。

toratezza0316.hatenablog.com

 

この辺り、

病院で診る患者と運動が苦手な子どもに、何か共通点を感じざるを得ません。

 

 

 

 

指標と戦略

 

いわゆる健常者だが「運動音痴」に属する子どもの場合、

・多くの場面で自重を支えきれない

・力を使い方が0%か100%で中間がない

・動きがパターン化しているため筋肉自体が硬い

という傾向にあります(経験上)。

 

なので、

私の考える運動学習のポイントは、

・開放運動連鎖=円滑な関節運動が行える?

・閉鎖運動連鎖=どの程度自重を制御できる?

といった所を主な指標にしています。

 

 

先日、

小学5年生で猫背・肩こり・身体が硬い、というお子さんを診る機会がありました。

やはり運動能力は決して高くなく、外で遊ぶという経験が殆どないまま骨格だけが成長してきているので、背中を固めて崩れるのを防いでいるような印象を受けます。

 

ここでは細かく書きませんが、やはり

「ほどほどの力で関節を動かす」ことが苦手で、

ブリッジやプランクといった自重を支える系の身体操作に関する稚拙さも際立ちます。

 

ので、

これらの指標の改善が日常的な身体活動や習い事の質を高めることを期待します。

 

戦略としては、

・股関節や肩の関節運動を円滑にする徒手的に)

・閉鎖運動連鎖を中心に自重を支えつつ動き

というワークを積み重ねます。

 

現時点では身体柔軟性をしっかりと引き出して、自分の重みを支えるというワークに慣れてもらうことが優先課題だと感じていますが・・・

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運動連鎖のワーク(例):前後・左右への荷重移動

 

こうのように動きに繋げていくことが運動連鎖を利用する上で重要になりますので、本人の学習意欲に期待しています。

 

 

まとめ

 

今回は運動音痴という微妙なテーマについて、

「運動連鎖」という、まだリハビリ業界でもあまりなじみのない用語を、できるだけ噛み砕いて紹介したつもりです(それでもややこしい話になりました)

 

・患者さんにとっての日常動作

・運動が苦手な健常者にとってのスポーツ

には何か共通する問題があるような気がしてならない。

 

そんな疑問から、

「動作」を前提としたトレーニングにはどのようなものが相応しいのかと考え、少しですが私の考えを述べました。

 

開放運動連鎖と閉鎖運動連鎖を使い分けて、少しでも苦手を克服することが本人の自信につながるようサポートしていけたら嬉しいです。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

 

スポーツに振った臨床推論2

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

前回、

ある少女の空手のスキルアップのためにどのような習慣をつけるのが望ましいか、について私見を述べました。

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

今日は、その続き<下半身編>です。

 

目次

 

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下半身はどこから? 

 

私が空手をやっていた頃は、

とにかく相手に近づいて欲しくないので間合いの外からポイントを稼きたい

という一心で、

「蹴り」を器用に使いこなすことを目標にしていました。

 

もっとも、

蹴りという技はそれ自体が目立つ動作ですし、空手を習う子どもにとっては「かっこよく」蹴りを出せることがある意味ステータスじゃないかとも思います。

 

 

さて、

「蹴り」とは言うまでもなく下半身の動きですが、下半身とはどこを指すのか?

という話をしてみます。

 

 

 

そもそも、

人間の身体を上と下に分けるとその境界線はどこでしょうか?

 

古い言い方になりますが、私は丹田を境界線と考えています。

 

丹田とは、

臍から指3本程度下にある経穴(ツボ)で東洋医学的には「エネルギー(気)を生み出す場所」という考え方になりますが、西洋医学的に表現すると

 

「重心」

 

です。

 

武道においては、

ある程度腹に力を込めた状態で技を出すのは基本です。

特に蹴り技のような片脚で支える状況では、下半身の起点である重心がブレずに次の動きへと瞬時に切り替える必要があります。

 

したがって、

激しい動きの中でも重心がブレないことは安定したパフォーマンスを発揮する上で非常に重要です。

 

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しかし、

図のように、子どもは成人と違って重心位置が相対的に高い位置にあるため、構造的にそもそもブレやすいことが分かります。

※中学生くらいになると、二次成長によって骨格は徐々に成人に近づいてきます。

 

 

 

 

下半身を使うために

 

さて、

上半身と下半身の境界線はわかりました。

 

では、

上半身と下半身はそれぞれ独立して使うものか、というと決してそんなことはありません。

素早く突きを打ち込むためには軸脚の踏み込みと推進力に伴う並進運動及び回転運動が必須になります。

 

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並進運動とは

「物体が捻れることなく平行移動する運動」

 

回転運動とは

「物体が位置を変えずに向きを変える運動」

と定義されています。

 

例えば、

ボールを投げる時に振りかぶって後ろの脚から前の足への体重移動は並進運動、身体を捻って腕を振りボールをリリースするまでの上半身の動きが回転運動ですね。

 

このように、

厳密には1つの運動に対してどちらの要素も含まれますが、

直線的な運動パターンと回転(回旋)の要素が多く含まれる運動パターンでは、

アナトミートレイン(筋膜経線)における姿勢制御の優先順位が変わってきます。

 

 

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身体を捻ることなく直線に近い軌道を描く並進運動の要素が強い「順突き」や「足刀」はラテラルライン

身体の捻りを利用した回転運動の要素が強い「逆突き」や「回し蹴り」はスパイラルライン

をメインに動員することになりそうです。

※他にもファンクショナルラインの動員は欠かせませんが、今回は省略。

 

 

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細かい構造はともかく、

ラテラルラインは頸から脚の裏まで体側面を安定させるように身体の外側を走り、

スパイラルラインは頸の後から始まりらせん状に胸郭を取り巻いてお腹の前で反対側へ交差し、脚の裏を通過して背面を覆った後に頸の後へ戻る長い筋膜連鎖です。

 

 

そして、

この2つの筋膜は同じ路線を走ったり分岐しながら、

側面や前面/後面を覆って姿勢の安定と動きを許容しています。

 

つまり、

重心が安定させて技を出せるということは、

上半身と下半身のいずれもが協調して骨盤を基底面内に留め、股関節と共に回旋や屈曲/伸展をしながら効率的な並進運動や回転運動を生み出せる

ということです。

 

 

 

下半身と上半身のバランス

 

 

さて、

ここでようやく、目の前の対象者が気にしている「蹴りのキレ」について考察していきます。

 

前回テーマにした通り、

「なで肩問題」や「親指問題」など決して上半身がバランス良く使えている状態ではありませんでした。

 

そのため、

・全身を固めやすく柔軟性に乏しい

・息を止めて動くクセがついている

体幹や下半身の操作性が低く並進運動や回転運動の幅が狭い

 

といった、

エネルギーロスを引き起こすために力で押さえ込み、「形だけ整えている」ように感じられました。

 

そこで、

上半身の動きと下半身の動きを無理なく協調して行えるような練習の必要性を考え、

以下のようなテーマでエクササイズを提供してみる。

 

・骨盤と上半身の並進運動・回転運動

・呼吸の持続

・床反力を利用した閉鎖運動連鎖(Closed kinetic chain)

 

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スタティック(動かずにそのままの姿勢をキープする)な要素とバリスティック(A⇔Bの姿勢を切り替えて動き続ける)な要素を混在させていますが・・・

 

以前も紹介した「ズラし」という考え方は、並進運動や回転運動を効率良くこなす上で不可欠な要素だと考えています。

toratezza0316.hatenablog.com

 

可動域制限を来たしており動きが制限される部位に関しては(特に肋骨の周囲や股関節)

徒手的に関連のある組織を伸張する

・呼吸の様式を切り替える(胸式呼吸⇔腹式呼吸

・一度に可動域を稼がずに少しずつ動きを広げる

といった微調整をしています。

 

 

訓練後は、

上半身(特に肋骨)による骨盤の引き上げが軸脚を助けることで並進運動が効率化して「脚が軽く」上がり、足刀のキレが増しています。

 

「宿題」として骨盤や肋骨・肩甲骨の操作を習慣化し、可動性を維持するワークをお伝えさせていただきました。

次回のセッションで、さらに高い水準を目指していこうと思います。

 

 

まとめ

 

空手というスポーツを題材に、上半身と下半身の役割について2回に分けて解説してみました。

情報を絞ってお伝えしたつもりが、あれこれと脱線してしまい伝わりにくい部分もアルト思います。

 

いずれにしても、高いパフォーマンスを発揮するには土台となる身体操作の効率性や柔軟性が必要で、

1つのスキルだけに拘らず多様な経験が必要だということが伝われば幸いです。

 

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

 

 

スポーツに振った臨床推論1

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

先日、医療従事者枠でやっとワクチンを接種しました。

直後は何ともなかったのですが、一夜明けると注射した部位の「三角筋」がバカになっている感じがして腕が重たいですね・・・

 

 

さて今日の記事は、

ある出会いから「スポーツにおけるパフォーマンスの向上」という視点が自分の中に生まれたことに感謝しながら、私見を述べていきます。

 

 

 

目次

 

 

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空手という競技の特性

 

突然ですが、

私はかつて空手を習っていた時期があります。

理由は「カッコよさそう」という、大変邪な動機でしたが、

それでも一応初段の免状がもらえた程度には、体捌きに自信を持っています。

※ただ、痛いのは嫌なので、組手も攻撃より守りに極振りして鍛錬していた思い出があります。

 

それはともかく…

 

空手という競技は、

突き

蹴り

受け

捌き

 

といった基本動作を試合が終わるまで流動的に繰り返し続け、

相手の技を上回るか相手の技を発揮させないようにコントロールするスキルが求められます。(※どの対人競技でも似たようなことは言えますが…)

 

なので、

・自分のスキルを発揮すること

・相手のスキルを封じること

は、ほぼイコールなんじゃないか、

と最近になって思うようになりました。

 

とは言え、

子供が空手を学ぶときに1番楽しく感じるのは、突きや蹴りといった分かりやすいスキルであることは間違いないです。

 

先日診たお子さんも、

強くなりたい=攻撃系のスキルを高めたい

という気持ちの感じられる、思春期ど真ん中の女の子でした。

 

 

身体的特徴から課題を絞る

 

 

なんでも、

空手自体は小さな頃から習っているがそれ以外の運動はあまり好きではないらしい。

 

そして、

失礼ながらとても空手をやっているとは思えないほど「なで肩」です。

 

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なで肩という身体的特徴は、

生まれつきの骨格によるところもあるでしょうが、

生活習慣によってもつくられることがあります。

 

例えば、

さいころからピッチャーなど腕を振る習慣がついていると

腕は身体の中心から外へ引っ張られ

それが慢性化することで

肩が腕の重量に負けた状態=「なで肩」

になりやすくなるといいます。

 

 

したがって、

目の前のクライアントに対して

「肩のアライメント異常(=骨関節が正常の配列からズレている)による不安定性」

を強く疑ってかかり、

・どのようなパフォーマンスが影響を受けているか?

・どのような手段がパフォーマンスを効率化させてくれるか?

という視点で課題を考えることができそうです。

 

そこで、

観察や動作から「指標」をとってみます。

 

 

①拳をつくると親指にやたらと力が入っている

 

②「型」が流れやすい(ピタッと止まらない)

 

③「よつばい」の姿勢になると、

 腕で体重を支えきれない

 

④頸が張っていて動かせる範囲が狭い

 

⑤疲れやすい(息を止めて動く傾向)

 

 

など・・・

文章だけでは伝わりにくいですが、色々と気になるポイントが出てきます。

 

 

 

 

筋膜ラインから問題を考える

 

 

物を握る時、

より安定した握り方は「小指側を締めること」

だと、以前も話題にしたことがあります。

toratezza0316.hatenablog.com

 

①拳をつくったときに親指側に力が入り過ぎる

というクセは、

「ディープフロントアームライン」

を使い過ぎる傾向にあり、

逆に

「ディープバックアームライン」

はあまり使えていない(弱い)

と仮説を立てることができます。

 

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経験上、

・子どもはまだ身体ができておらず、そもそも力の調整が上手くない

・力が上手く伝わらないときには「力む」ことで形だけは揃えようとする

ことは、臨床のあらゆる場面で観察されます。

 

 

 

「強い力で殴りたい」

という無意識的な欲求は親指の筋肉を緊張させやすく、

ディープフロントアームラインの影響で小胸筋の過度な収縮につながります。

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

すると、

前に押し出した腕に肩甲骨が引っ張られ肩を下げていきます。

 

本来ならディープバックアームラインである腱板筋や上腕三頭筋が肩甲骨を安定させて正しい位置に保つのですが、

力んだ状態で「突き」を出す(=アクセル)習慣は、

ピタッと止める(=ブレーキ)

という働きを邪魔します。

 

そして、

肩甲骨が安定しておらず後ろのラインに力が上手く入らないために、

腕で身体を支えられない

という、

スポーツにおいて割と致命的な問題を抱えることになります。

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つまり、

まだ身体のできていない子どもが1つの技能を漫然と繰り返していくと、

一部の筋肉(筋膜ライン)だけが頑張りすぎて全体の発達を阻害しやすい

ということです。

 

したがって、

特に子どもの頃は何か1つのスキルに特化するよりも、色んな経験をさせて身体操作の原則をしっかり身につける方がメリットが大きい

ことを強く示唆しています。

 

 

 

 

バランスよく使うために

 

 

療育という場面で常に観察されるこれらの問題は、

所謂「健常者」の中にもかなり多い印象です。

 

 

今回は上半身に特化して話していますが、下半身のコントロールにももちろん課題はあります。

それはまた次回お話するとして・・・

 

 

上半身の問題に対しては、

肩の位置のズレを修正することが重要であると判断します。

 

それには、

「親指が頑張り過ぎるクセ」

を抑制して

「小指を使う習慣」

がキーポイントです。

 

 なぜなら、

親指はディープフロントアームライン

小指はディープバックアームライン

であり、

バックラインを意識的に使うことでフロントラインへの偏りを減らすという運動学習が必要だからです。

 

例えば、

拳をつくるときは小指から順番に人差し指へと曲げていくこと

雑巾を絞る時は掌の小指側に引っかけるように捻る

棒状の物を持つ時には親指と人差し指を抜いて持ってみる

などが挙げられます。

 

私が療育の現場で仕事をするようになって、

思いの外「雑巾の絞り方」を知らない子が多いことに驚きました。

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単純な握力の強い弱いではなく、

腕がすぐに疲れる子や、手先の器用さに乏しい子

の大部分が、こういった基本的な手の使い方ができていません。

 

 

また、

バットを振り回す状況に限らず(包丁・ハンマー・箒・・・)、

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「しっかりとグリップする」

とは指にとにかく力を込めることではなく、

指の付け根と掌で上手く圧をかけることであり、

それを担うのは小指側のラインです(図でいうと小指の「B2~A1」エリア)

※プロ選手は殆ど人差し指を抜いて握っている

 

 

このような習慣をつけるだけでも、アームラインの偏りは修正できる可能性があります。

 

加えて、

今回のケースでは徒手的な操作によって、

頑張り過ぎている筋肉(小胸筋)を落とし

頑張って欲しい筋肉(三頭筋・腱板筋)の働きを助ける

ように持っていったつもりです。

 

 

結果的に、

エクササイズ後は肩の位置が傍目にも正常化し、

腕で体重を支えやすくなり

頸周りの緊張が落ちて可動域が増え、

胸郭の動きも引き出される

といった指標の変化と自覚的な「肩の軽さ」が得られたわけです。

 

 

まとめ

スポーツでパフォーマンスをより高めるには、

そのスポーツに必要な身体操作の質を高めることがやはり重要ですね。

 

特に、

子どもの場合は「その動きしかやってこなかった」ことで明らかな「偏り」が生じているとしたら、

その競技を指導する人だけではもはや解決が困難である可能性が高いです。

 

そういった分野でも、セラピストの視点で物事を観察すれば十分価値を提供できる余地が残っているということ。

 

今回は上半身編、ということにしてかなり要点を絞って話しました(それでも長くなりました)がここまでとします。

次回は下半身についての話ができたらいいな・・・と思ってます。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。