週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

手を診る時のポイント

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

寅丸塾の管理人です。

 

GWに入りましたが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか。

昨年に続いて、何かと行動を制限される休日となってますが…

 

最近は塾のメンバーが増えたこともあり一人一人と話すことが少なくなってしまい申し訳ないな…

と思いながらも、ブログを通じて補足的な説明をしていこうと思っています。

 

今日の話題は筋膜なのですが、特に「アームライン」について語っていきます。

 

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前回の記事はコチラ↓

toratezza0316.hatenablog.com

 

昔は若かった

 

私は元々病院勤務の作業療法士ですので、

「上肢」のリハビリテーションが必要な症例というものを多く経験しています。

 

なので、

若手の頃から「ハンドセラピー(主に上肢の外傷に対するリハビリテーション」に関してはある程度こだわりを持って仕事をしてきました。

 

しかし、

「筋膜」という知識を当時は持っていなかったために、

肩なら肩の訓練

肘なら肘の訓練

指なら指の訓練

みたいな考え方で動いていました。

 

それは、

「自分は肩や肘、指といった解剖学をしっかり学んでいる」

という自負があったからなのですが、

今思うとそれはただの無知な奢りだったな、と感じます。

 

今では、

「指の使い方」の異常と「肩の運動パターン」や「体幹」はリンクしていることを常に考慮しながら問題と向き合うようになり、

局所的・限定的なものの見方が如何に狭い視野だったかを痛感しております。

 

 

 

前腕線と後腕線

 

以前のブログで、

ディープ フロントアーム ライン

について言及しました。

toratezza0316.hatenablog.com

 

これは、

肩のインナーマッスルである小胸筋から始まって、

上腕二頭筋・橈骨骨膜

を経由した後、

母指球筋

に付着する、

上肢の前面を走行する筋膜のラインでした。

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胸と肩を繋ぐ「胸筋」

肩と肘を繋ぐ「二頭筋」

物を持ち操る「母指球」

 

これらはいずれも強力で、腕をよく使う人はこれらの筋肉が疲労しやすい傾向にあります。

そのために、

前面にある「アームライン」が短縮し身体を前に引っ張りやすいという傾向を持ちます。

 

 

 

一方、

 

ディープ バックアーム ライン

 

は、上肢の後面を走行する筋膜ラインです。

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頸→肩甲骨→上腕→尺骨→小指

つまり小指と頸を繋いでいる筋膜ラインなのですが…

 

その間に「肩甲骨」という上半身の土台を跨いでいるため、

肩甲骨の動きの悪さが頸にも指先にも影響する

という、

非常にデリケートなラインなのです。

 

 

肘や手首の外傷でギプス固定が取れた後の訓練は、

「肘や手首を動かすこと」

が最優先事項になりますが、

 

それまでギプスという異物を身につけていた患者の殆どは、左右のアンバランスから「肩こり」に見舞われています。

 

つまり、

上肢の重量が増え肩甲骨への物理的ストレス(+不動)が慢性化し、

肩甲骨の安定に不可欠な「肩関節腱板筋」の弱体化、もしくは硬化によって肩甲骨が機能しない状態になっていることが非常に多くみられます。

 

 

そもそも、

我々人間は二足歩行と引き替えに「前足」を宙ぶらりんな状態にしたわけです。

腕という物質が肩からぶら下がっているだけでも、肩甲骨には結構なストレスが生じているということ。

 

 

 

臨床推論へ

 

ちょっと難しい話になってしまいましたが、

ディープフロントアームラインは、前を走り胸から母指へ

ディープバックアームラインは、後ろを走り頸から小指へ

 

という違いがあります。

 

 

そして、臨床上の観察ポイントとして

 

「目の前の患者は物を握るとき、親指と小指、どちらをよく使うか?」

 

という見方はざっくりですが重要なポイントではないか

と私は思っています。

 

肩こり患者を含め、

上肢のどこかを損傷している人の握力は弱っています。

 

そのときに、

親指側に頼るような握り方になってしまう人はフロントアームラインが強く働き、バックアームラインは使えていない

という傾向があります。

 

これは、

雑巾を絞るとか包丁を持つとき、本来は小指側でグリップするべき所を親指に依存するような動きに露骨に表れます。

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このようなことから、

「手はよく動くようになったのに料理が上手くできない」

と仰る患者さんは一定数存在します。

 

 

健常者の「肩こり」に関しても、

・身体が前傾姿勢だ

・肘が曲がっている

・親指を握り込みやすい

・呼吸のとき胸が開いてこない

といった特徴があれば、フロントアームラインの緊張が強いのかもしれません。

 

逆に、

・頸の動きが悪い

・肩甲骨が硬い

・反っている

・親指の力が弱く手首を起こしながら握っている

などの特徴はバックアームラインが過剰なのかもしれません。

(※あくまでも個人的見解であって、100%そうだという主張ではありません…)

 

 

こういった視点で患者さんを診ることができると、

・どこを強化するべきか、

・どこの緊張を落とすべきか、

・最大の問題は指なのか?肩なのか?

といった幅広い視野で問題を捉えることができそうですね。

 

 

まとめ

 

今回は上肢の問題で(私が個人的に)よく比較する、

・ディープフロントアームライン

・ディープバックアームライン

について簡単に紹介しました。

 

筋膜ラインは全身に様々な形で存在するため、あくまでも基本的な考え方に過ぎません。

が、知っているのと知らないのとではやはりリハビリテーションの質がまるで変わってきます。

 

もしあなたがセラピストなら、

身体のつながり

という原則的な思考をもってリハビリテーションの質を高めていく努力をしていただけると幸いです。

 

今日もここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。