週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

坐骨神経痛はどうにもならない?

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

尾道で唯一の疼痛治療専門家のブログへようこそ!

 

 

毎日色々な痛みを抱える方と向き合っていく中で、

目に見えて良くなってくる方もいればその場ですぐ変化が出せない方もいて、

まだまだ自分の修行不足を感じてしまいます。

  

ただ、私もかつて師匠から

「どれだけ自分の商品力を高めてもどうにもならない人もいる」

と教えられたように絶対はない

ということも肝に銘じていかなければなりません。

 

 

さて、

先日(職場で唯一支持してくれる)後輩から

坐骨神経痛って徒手的に治せるものなんですか?」

という疑問を提示されました。

 

そういえば過去の私も、

坐骨神経痛など「出来れば当たりたくない」症例の代表格でしたし、

作業療法士だからそんなんあんまり関係ないし」

と、問題から目を背けていた時期が確かにありました。

 

 

 というわけで、坐骨神経痛について症例を通して真面目に考えていきます。

 やや長文になりますが最後までお付き合いください。

 

 

なお、

この問題については皆さんもご存じかも知れませんが、

病院で診察を受けても原因が分からないことが多く(というかほとんどの場合)

「年のせいですね」

「脚をストレッチしなさい」

「痛み止め出しときますから」

のパターンになっています。

 

 

肩の骨折で通院している80代の女性は、

とりあえず利き手として使える程度に腕の運動機能は回復しました。

 

しかし若い頃から畑仕事で身体を酷使してきた女性には慢性的な筋疲労や骨関節の変形・摩耗など多くの身体構造上の問題がベースにあります。

 

 

緊急で重要な「肩」の問題がある程度落ち着いてくると徐々に訴える内容が変化してくるわけですが、

特に数年来抱えている坐骨神経痛について口にされるようになりました。

 

具体的には

両方痛いけど特に左の腿の裏がしびれたような感じ

で、

何年も電気当てたり温めてもらったりしてる

 

と、

どこかで聴いたことがあるような訴えです。

 

 

もう少し掘り下げて尋ねていくと、

肩を骨折してから以前よりも背中が曲がったような感じがする

仰向けになるときに特に腰が痛い

 

この方は高齢ですが気持ちは若く

会話や仕草から「人に見られる」ことを意識しているのが伝わる女性らしい方です。

 

 

 あなたがもしセラピストなら、

「梨状筋(りじょうきん)」という筋の存在を知っているはずです。

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私がこのような症状の方の治療に当たるとき、

まずどの筋肉が神経を絞扼(圧迫)しているのか

を鑑別していきますが、

そのとき優先的な容疑者として浮上するのがこの梨状筋です。

 

見ての通り、

坐骨神経の通る狭いトンネルを一緒に走っているわけですから、

梨状筋が何かしらのトラブルによって硬くなっていれば

動いた時に坐骨神経を圧迫して神経症状を引き起こす

ことが想像できるかと思います。

 

この梨状筋を正確に捉えることができると、

対象者に何かしらの反応が出現します。

 

今回の場合、

私が対象者の梨状筋を捉えたまま身体を捻ってもらうと

「いつもよりよく回る」

という現象が観察されます。

 

つまり、

梨状筋の柔軟性を一時的に獲保して骨盤に関連した運動をするとパフォーマンスがその場で変化するという現象が起こる訳です。

 

この結果から、

長年に渡りこの方を悩ませていた坐骨神経痛の正体は梨状筋のトラブルである

と特定する事ができました。

 

したがって、

解剖学に準じた梨状筋の柔軟性を底上げするエクササイズが選択されます。

 

 

 

しかし、まだ問題が残っています。

 

肩の外傷を契機に、

背中が曲がりやすくなり寝転ぶと痛い

という問題に対しては、まだ別の原因がありそうです。

 

外傷後に姿勢制御が不良になったということは、

肩甲骨という土台の崩れが疑われます。(詳しくは↓)

toratezza0316.hatenablog.com

 

実際、

肩自体の問題も残っており腕の動きの出発点である肩甲骨のポジションも外側に脱落しています。

 

つまり、

肩甲骨の位置が崩れることで隣接する背中の筋肉(姿勢を保つ筋肉)が引き延ばされバカになっている

ことがもう一つの問題として挙げられます。

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したがって、

肩甲骨を正し位置に整えることで結果的に姿勢を作る筋肉が働きやすくなる

という仮説を基に治療を展開していきます。

 

 

実施後は、

その場で寝転んでも「痛くない」

「背筋が伸びるようになった」

「脚が軽くなった」

という変化が確かにもたらされ、神経症状は「消失」までいかないものの劇的に改善したのです。

 

 

静的支持機構(骨関節)の問題に拘らず動的支持機構(筋肉)の機能障害に焦点化して可能性を追求する。

 

そして、

慢性化した問題はある程度反復した治療が必要なこと

他にも問題が残っている場合もあるためその都度鑑別が必要なこと

セルフメンテナンスの重要性

 

をご理解いただき、

次回来院時どう変化しているかを問うことも重要です。

 

 

なお、

坐骨神経痛単体でリハビリテーションが処方されることはまれで、

今回のように他の問題の「ついでに」セラピストとして関われる機会が偶然やってくるというケースが多いです。

 

多くのセラピストが問題に蓋をしてとりあえず筋トレやストレッチなど、その場しのぎをしている現場を私は見てきています。

 

 

そんな現状に少しでも疑問をお持ちで、

対象者に価値ある治療を提供したい

そんな熱意のあるセラピストのため、

この場を借りて小さく宣伝させていただきます。

 

 

 

2017年6月18日(日) 9:30~12:30

筋骨格の機能障害を考える(上肢編)

 

と題したセラピスト向け(PT・OTの方が対象)のセミナーを開催します。

 

実技を中心とした実践的な内容を予定していますので、定員を6名とします。

場所は尾道市御調町)を予定しています。

なお、参加費・運営費としてお一人様5000円いただきます。

質問や参加希望などございましたら、お気軽にこちら↓までご連絡ください。

toratezza.0316@gmail.com

ご連絡いただいた方には、追って詳細をお伝えします。