週末に本気を出す療法士

自分の目に映る「リハビリ難民」を西洋と東洋、双方向から診る療法士。セミナー寅丸塾を不定期で開催しながら、普段は家でも職場でも子どもに振り回さる会社員。

耐震性と免震性

今日もアクセスいただき、本当にありがとうございます。

尾道で唯一の疼痛治療専門家のブログへようこそ!

 

このブログは、

元々痛みにお悩みの方に向けて発信し始めたものですが、

最近はセラピストの方も読んでくださる機会が増え、内容が少し専門的なものになりつつあるなと感じています。

 

さて、

再三に渡りリハビリテーションのあるべき形について語っていますが、

リアルな現場ではいかんせん窓際族です。

 

私一人で組織全体をどうこうするなどまず不可能ですが、

こうして読んで下さっている方や自分の手の届く限りの対象者に最大限の価値を提供することが務めだと思って、今日も動いています。

 

 

toratezza0316.hatenablog.com

 

↑以前にも身体を家造りに例えて語ったことがありますが、

もう一つ分かりやすい(あくまでも主観)例をご紹介していこうと思います。

 

 

建築基準法における「耐震構造」とは、

建物を固めて丈夫にすることで揺れないようにする仕組みのことです。

モノとして形を保つために必要な固さを、そのまま振動対策に用いた方法で、

最も簡便な地震対策として従来から利用されてきました。

 

ところが、

いざ地震が起こった時には建築物の揺れは上の階ほど強くなり、家具の転倒や壁にヒビがが入るなど、耐え切れず破損を招く要素が必ず露見します。

 

そして、

研究によって固めることだけが最善でないことが明らかになり、むしろ衝撃に対して「揺れる」「移動する」ことで被害を少なくする考え方が生まれました。

 

つまり、

「固めて動かないようにする」のではなく「揺れて衝撃を逃がす」ことで結果的に構造を守るという免震が普及しつつあります。

 

 

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この考え方が人体にも同様の作用をもたらす

と考えると、

 

どちらがより健康状態を良好に保つか?という質問に対して

言うまでもなく免震装置の機能している構造である

と断言できます。

 

 

そもそも人体は、

歩く時には下肢だけが運動している訳ではないし、

物を持つ時には上肢だけが働いている訳でもありません。

 

 

試しに腰から上を一切動かさずに歩こうとしてみてください。

どうしても小股になったり呼吸すらままならない、まるで患者さんのような歩き方になります。

 

つまり、

身体を固めたまま表面的な歩行や手を使うトレーニングを繰り返していくと

必ず衝撃が身体に蓄積し

「腰や膝が痛くなる」

「背筋を伸ばせと言われても伸びんよ」

的なギャップが生じてきます。

 

それを防ぐには、

土台の機能をどのように捉えるかが重要になってきます。

 

 

元々スポーツをされていた60代の体育会系のオジサンは

長期的な治療上安静を余儀なくされガリガリに痩せた状態でリハビリテーション処方されました。

 

運動以前に身体恒常性が破綻しており、

呼吸・循環・消化器官を制動していくことが優先事項でしたが(内臓系の治療についてはこちら↓)、

toratezza0316.hatenablog.com

 

それを改善した上でも筋原性の問題が明らかで

「寝返りのしかたを忘れた」

と非常に的を得た記述をされました。

 

この発言の裏には、

寝返りに必要な肩と腰の捻りを生み出す身体的な余裕がなくなり、

肩と腰(≒体幹)を一塊の物体としてしか扱えなくなってしまった

という背景があります。

 

従って、行為としての「起きる」「座る」「立つ」などよりも、

肩と腰を使い分け身体の柔軟性を確保することが次の課題として選択されます。

 

それによって結果的にパフォーマンスが改善すれば

いちいちセラピストが対象者を引っ張り上げたりしがみつかせて立たせるような必要もなくなる訳です。

 

正にこの方も、

「楽になった」ことで本来の動き方を思い出し動作が効率化するに至りました。

 

 

 

動けないという現象に対して何を優先するか

を見極められるか。

 

あなたがもしセラピストなら、

目の前の問題に対して耐震と免震どちらを目指しているのか。

一度問題や展望を整理してみるきっかけになればと思います。